バレンタインデー[9]

『ごちそうさまでしたー』
2人そろって完食したあとは、2人で片づけをしてまったり。
しばらくすると、佳織はサっと立ち上がって、冷蔵庫の中から何か取り出して、
俺のところに戻ってきた。
「はいっ、これ・・・・」
手渡されるものっていったらひとつしかない。
四角くカットされてココアパウダーがまぶった、あの美味しい生チョコだ。
さっそくひとつ口に運ぶ。

「あぁ・・・懐かしい味だな」
「でしょ〜」
「お前、店出せるんじゃねえか?」
「いや〜無理だよ、これ結構お金かかるんだから・・・」
「え?板チョコ溶かすだけじゃねえの?」
「クーベルチュールっていう高いチョコつかってるから(笑)」
「へ〜」
「普通の板チョコぐらいの大きさで、500円ぐらいするんだよ〜」
「そ、そうだったのか!!」
「そうそう。脂肪分が28℃ぐらいで溶けるから、
口の中ですぐなくなっちゃう感じするでしょ?」
「おぉ、そういわれれば」
本気で、主婦業で終らせるのはもったいないなと思いつつ・・・


俺はその1年1回の味を堪能していた。

「あ、もうひとつ・・・・」
といってまた佳織は冷蔵庫に何かを取りに行った。
「へへっ、今日は・・・特別だからね」
今度は、生クリームやミントで綺麗に飾られたショコラだ。
どこの店で食うケーキよりも・・・、というか、世界一美味しかった。

「なんかアレだなぁ、バレンタインは結構いろんなことあったよなあ」
「そうだね〜!」
「中2の頃は・・・泣きながら食ってたんだよなあ、チョコ」
「へぇ、そうなんだ」
「んで中3のときはもらえなくて凹んで・・・・」
「賢ちゃんがフったからでしょ。」
「うぅ・・・そうなんだが」
「高1も高2も、義理っていうかー、買ったやつだっただろ?」
「あ〜あれね、だって、迷惑かな〜って思ったんだよ」
「うむ・・・・」
「で、3年の受験勉強真っ只中に・・・」
「あはは、そうだったね〜」
こんな話をしていたと思う。
俺達は、バレンタインになるといつもこのことを思い出しては、話す。
そして佳織から貰うものは、決まってあのチョコだ。
・・・今は子供が手伝うので、綺麗な四角ではないが。
「おまえなあ、もうちょっと綺麗に切れよ!」
「だって包丁こわいんだもん!!」
「はぁ〜っ!?こわいっておまえ、おかーさんのほうが
よっぽどこわいだろうが・・・・あだっ!!!」
バスケットボールを俺に投げつけたのは、娘ではなく佳織だった。


「お父さん!」
「す、すいません・・・」
「わ〜、パパ怒られてる〜」
「お前らは黙ってろ!!」

『お前ら』っていうのは、俺達は2つの命を授かったからだ。
2卵生双生児で、男と女が1人ずつ。
娘のほうは佳織によく似て生意気で強く、顔も昔の佳織にそっくりだ。
息子は俺によく似ている、と、佳織は言う。
まあ、多分、娘は佳織に似て料理が好きだし、良い嫁さんになってくれることだろう。
子供2人ともバスケが大好きで、休日といえば俺達4人でバスケをしに出かけた。

・・・少し話しが飛んだが、結婚式をあげたのはバレンタインデーで、
そして子供が生まれたのはなんと翌年のバレンタインデー・・・
俺達はよっぽど縁がある日なのかもしれない。
結婚してすぐ、『まだたまに吉村さんを見かけるのでキモチワルイ』と佳織は言うし、
それにいつまでも同棲してるのに2部屋あるのもおかしいだろう、ということで
俺達は地元に戻って、佳織のおじいさんの代からある、
使っていない荒地を頂いて、一軒家を建てたのだ。
金銭的にまだまだ厳しい部分もあるが、俺と佳織は同じ会社に就職し、
一生懸命働いている。

ある日の兄妹喧嘩・・・
「お母さん!!こんな奴よりもっと優しい妹が欲しい!!」
「お母さん!!こんな奴よりもっと強い弟がほしいよ!!」

俺達は、腹をかかえて笑った。
こいつらも今度から小学生、そろそろ・・3人目か?なんて、思ったりする。
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